京都東山の京町家を改修した旅館。美しい竹林をもつ高台寺、緑に張り出す清水の舞台、寺社仏閣への参道など、東山に足を踏み入れると、日常とは異なる刻の流れを感じます。自然と歴史的建造物が織り成す佇まいを継承し、歴史ある町特有の時間が流れる旅館をめざしました。
内外装には竹を象徴的に扱っています。ファサードや坪庭に植えられた本物の竹に始まり、竹を使った灯りや、竹天井など、竹の素材感と美しさを散りばめました。室内は暗く抑え、前庭や坪庭から差し込む自然光の変化を味わえるようにしています。太陽が沈み、夜が始まる「宵」の刻に、人は明るさの変化、時間の移り変わりを最も敏感に感じ取ります。そして、「日が長くなった、短くなった」と、季節で移り替わる宵の時間の変化を口にします。一日の終わり、明日に思いを馳せる宵の口に、歴史ある東山を味わい尽くして帰路に就く宿として、ふさわしい空間をめざしました。