地価が高い東京都心では、相続の度に土地が小さく切り刻まれていく光景をたびたび目にします。この土地の所有者は、土地を切り刻むことなく、相続人に平等に土地を享受させたいと考え、集合住宅を計画しました。代々受け継いだ土地に根付く大きな赤松などの樹木を残し、場の記憶を継承しながら、相続人を単なる血のつながりでなく、生活の場を共有し共存する関係にする建築が必要だと私たちは考えました。
相続の平等性と住人の独立性を担保するために、住戸を南北方向の短冊状に均等に配置しています。同時に、すべての住戸をつなぎ合わせるように、南北に大きな庇を張り出しました。庇のつくる軒下空間が住人同士の往来を促し、軒先から隣人を招き入れ、付かず離れずの良好な関係が育まれています。