浅草の大通りに面する複合ビルに施した耐震改修工事。昭和43年に竣工したRC造、耐震性能が足りていない上に、当時の設計図書も見当たりませんでした。
地下1階地上6階建のこのビルには、地下鉄浅草駅から地上へ上る階段と出入り口が組み込まれていました。民間の建物でありながら、足下では公的な役割を担っています。
前面道路は特定緊急輸送道路に指定されており、災害時の救急輸送を円滑に行うために、ビルの建替もしくは耐震改修工事が求められていました。しかしながら、日常的に利用される地下鉄への動線があるため、今すぐに建て替えることは不可能でした。そこで建替ではなく、改修でビルを刷新するという方針に至りました。
まず耐震診断を実施し、必要な耐震補強設計を洗い出しました。最上階の床を抜き、外壁には開口を設け、耐震的に有利になるようにコンクリートを減らして重量を軽くする設計を同時に行いました。
その結果、吹抜けのある天井の高いホールが生まれ、ファサードに開けた孔が建物の内外を繋ぎ、リズムのあるルーバーで大通りからの視線を調節できるようになりました。
安全な建物にすることを第一目標に、明るい外観、使いやすい内部空間が備わり、この先も長く愛される建物へと生まれ変わりました。